むし歯の治療について
むし歯は、細菌感染であり、さらには細菌感染により歯が脱灰し、穴になってしまった状態(実質欠損)のことを言います。
見た目としては、黒くなっている、穴になっているのが虫歯の特徴です。ただし、必ずしも黒くなっていたり、穴になっているとは限らず、より正確な診断はレントゲンX線写真が必要になります。
穴になってしまった状態、つまり実質欠損の大きさによってC1からC4まで進行ステージが分けられており、各進行ステージによって治療法が異なります。
C1は、虫歯がエナメル質(一番外側の硬い組織)の範囲に留まった状態を指します。
このC1は、虫歯を取り切った後の穴がまだ小さいので、多くの場合、その日で処置が完了します。またC1はほとんどの場合、痛みなどの自覚症状がなく、詰めるのはコンポジットレジンという樹脂を使用します。レジンを穴の開いた歯にくっつける(接着させる)イメージです。柔らかい樹脂を穴に詰めて、形を整えてから光を照射して固めます。
上の図は実際にコンポジットレジンで虫歯を治しているところです。
①右側に穴があり、穴の底が黒くなっていることが分かります。
②虫歯をドンドン取っていきます。
③虫歯を取り終わり、レジンを詰めるための前準備です。
④レジンを詰めて、治療完了です。
C2は象牙質まで進行してしまった虫歯の状態を指します。C2になると冷たいものでしみたり、痛みを生じてくることが多いです。C2では先ほどのコンポジットレジン修復もしくはインレー修復という治療を行います。
インレー修復では一般的に、虫歯を取りきった後、内面にコンポジットレジンやセメントを置き、適切な形に削り出して型取りをします。
取った型で石膏模型を作成し、歯科技工士にインレー修復物を作ってもらいます。
このインレー修復物には、金属や白いセラミック(陶材)などいくつか種類があり、費用、見た目、機能などを考慮して選びます。
インレーセット完了前後
C3は虫歯が歯髄まで達している状態です。
夜寝られないほど痛かったり、ドクドクと拍動する様な痛みを生じている場合はC3の可能性が高いです。また歯髄の感染が根の先端まで到達した場合は神経が完全に死んでしまい痛みが消失していることもあります。
現在の歯科では、感染した歯髄を感染前に戻すことは出来ませんので、神経を取り除いてきれいにする必要があります。
根の治療が終わったら土台を作ります。これは外れにくい被せ物を装着するために必要な手順で、簡単には次のようになります。
C4は虫歯で歯冠(歯の歯肉から見えている部分:歯の正常と異常のページに詳しく書いてあります。)の部分が無くなってしまっている状態で、残根という表現が用いられることもあります。
C4はすでに歯の大部分を失ってしまっている為、「歯を治す」というより「歯を作り直す」という治療に近く、条件が整っていないと抜歯になります。
これは非常に気の毒なのですが、抜歯せずに放置しているよりも、抜歯して抜いた所にインプラント、義歯(入れ歯)、ブリッジの様な歯に置き換わる人工物(欠損補綴(けっそんほてつ)と言います)を装着した方がお口の健康の為にはメリットが大きいと判断した際に御提案させて頂く処置になります。
では、条件が整っている時とはどの様な場合なのでしょうか。
オレンジと赤のブロックを接着剤でくっつけて上の図の様に地面に埋めたとします。この時に横からトンカチで叩くとどちらが取れにくいでしょうか。恐らく左の方が取れにくいと思いませんか?
例えが上手かったか分かりませんが、これと似た様な現象がお口の中でも考えられます。
上の2つの歯はどちらも根の治療後に土台を立てています。左は歯肉から(骨から)少し上の方まで自身の歯がありますが、右はほとんど歯肉の高さまでしか自身の歯がありません。つまりC4の状態です。これに強い力がかかると、右の方は折角被せ物をしてもすぐに取れてしまうと考えられております。
この歯肉(骨)から数mmほど歯が出ていると取れにくい状態をフェルール効果(帯環効果)といい、私たち歯科医師が被せ物をする上では非常に大きい判断基準になっております。